「ミドルシニアが再評価されている」「40代・50代に追い風」——2026年に入ってから、こういう見出しをよく見かけます。でも実際に転職サイトを開くと、自分の年齢で応募できる求人はそんなに増えていない気がする。煽られている感じがして、かえって動きにくい。この記事では厚生労働省「令和6年雇用動向調査」とマイナビキャリアリサーチLabの調査という一次データだけで、追い風が本当に吹いているのか、誰に吹いているのかを確認します。結論から言うと、追い風は実在します。ただし恩恵の大きさは年代でくっきり分かれ、その境目は「50代」ではありません。
結論|追い風は本物。ただし恩恵は「40代後半〜50代前半」に偏っている
みなと
最近「ミドルシニアが再評価されてる」って記事をよく見るんですけど、あれって本当なんですか? 正直、転職業界のポジショントークなんじゃないかと疑ってて……。
りこ先生
疑うのは正しい姿勢よ。だから今日は公的統計だけで確かめましょう。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」で転職した人の賃金の動きを見ると、全体では「増加」40.5%に対して「減少」29.4%。増加が減少を11.1ポイント上回り、前年から増加の割合は3.3ポイント上がっているわ。
データが示すのは「年収が上がる転職」が増えているという事実
りこ先生
ここからが本題。同じ調査を年齢階級別に開くと、45〜49歳は「増加」46.4%・「減少」23.8%。差し引き22.6ポイントのプラスで、全体平均より倍近く良い数字なの。しかも前年からの伸び幅は+9.1ポイントで、全年齢階級の中で最大。「再評価」という言葉に、この年代については確かに裏付けがあるわ。
ユウタ
この数字は意外だった。当ブログが伴走している51歳・法人営業25年のケースでは、体感は「厳しい」しかなかったからね。でも統計が言っているのは「決まりやすい」ではなく「決まった人の条件が良くなっている」ということ。ここは分けて読まないといけない。
ただし55歳を境に、数字の向きが変わる
りこ先生
そこが今日いちばん伝えたいところ。50〜54歳は「増加」39.0%・「減少」28.2%でまだプラス圏。ところが55〜59歳は「増加」27.4%に対して「減少」36.6%で、マイナス9.2ポイントに逆転するの。前年比も−0.3ポイントで横ばい。追い風が届いているのは実質40代後半から50代前半までと読むのが正確よ。
みなと
境目が「50歳」じゃなくて「55歳」なんですね。ひとくくりに「ミドルシニア」って言われると、49歳の人と58歳の人が同じ扱いになっちゃう……。
なぜ今、ミドルシニアが再評価されているのか
りこ先生
背景にあるのは市場全体の動きね。マイナビキャリアリサーチLab「転職動向調査2026年版(2025年実績)」では2025年の正社員転職率は7.6%、前年から0.4ポイント上昇して調査開始以降の最高水準。同調査は40代・50代の転職率も2021年以降右肩上がりが続いているとしているわ。パイが広がる中で中高年にも順番が回ってきている構図なの。
企業が欲しがっているのは「教える時間がいらない人」
ユウタ
採用側の話を聞いて感じるのは、「育てる余力がないから、育てなくていい人が欲しい」という空気だね。若手を3年かけて戦力にする前提が崩れつつある。そうなると明日から動ける経験者の相対的な価値が上がる——これが再評価の中身で、年齢そのものが評価されているわけじゃない。逆に言えば即戦力性が伝わる形になっていない人に、追い風は吹かない。伴走ケースでも応募20社で書類通過ゼロの時期があった。25年分を均等に書いた書類が「今この人に何ができるか」を伝えていなかったんだ。
データで見る|あなたの年代は今どの位置にいるか
厚生労働省「令和6年雇用動向調査」から、転職した人の賃金がどう動いたかを年代別に並べます。
- 45〜49歳:増加46.4%/減少23.8%(差+22.6pt・前年比+9.1pt)=最も強い追い風
- 50〜54歳:増加39.0%/減少28.2%(差+10.8pt・前年比+4.4pt)=プラス圏だが伸びは半分
- 55〜59歳:増加27.4%/減少36.6%(差−9.2pt・前年比−0.3pt)=減少が上回る
- 60〜64歳:増加13.6%/減少60.9%=再雇用の影響が強く出る別の領域
「求人が増えた」と「決まりやすくなった」は違う
りこ先生
ここも誤解しないでほしいところ。同じ調査で実際に転職した人の割合(転職入職率)を見ると、男性は40〜44歳6.8%、45〜49歳6.0%、50〜54歳5.1%と年代が上がるほど下がるの。「動いた人の条件は良くなった」けれど「動ける人が増えたわけではない」——この2つは別々に読む必要があるわ。
みなと
なるほど……門が広くなったんじゃなくて、門をくぐった先の待遇が良くなったってことか。それなら「今なら誰でも受かる」みたいな読み方は危ないですね。
追い風を自分の話に翻訳する3つの確認
①「即戦力」を、応募先の言葉で言えているか
ユウタ
伴走ケースで最初に手を入れたのがここ。「法人営業25年」は経歴であって、即戦力性の説明にはなっていない。書き直したのは、直近の担当領域・扱っていた商材の規模感・入社後すぐ再現できることの3点。年代順ではなく、貢献度順で厚みを決める——それだけで書類の見え方が変わった。
② 年収レンジを、現実の分布に合わせているか
ユウタ
もう一つ見直したのが希望年収。現職維持を絶対条件にしていたら、そもそも会える求人がほとんどなかった。具体的な金額は伏せるけど、「この線を下回るなら動かない」という下限だけを決めて、上は開けておく形に変えた。データを見ても、上がる人が4割・下がる人が3割の世界だからね。全員が上がるわけじゃない。
りこ先生
その決め方は理にかなっているわ。希望を一点で決めると、1円でも下回る求人が全部消えるの。下限だけ決めて幅を持たせれば会える相手が増える。下限は「生活が回る額」から逆算して、感情ではなく計算で決めるのがコツよ。
③ 動ける残り時間を数えているか
りこ先生
55歳で数字の向きが変わる、という事実は裏を返せば「50代前半のうちは条件面で戦える」ということ。今51歳の方なら、追い風の中で動ける時間はおよそ4年。「まだ早い」と「もう遅い」の間は、思っているより短いわ。焦る必要はないけれど、先送りの理由を毎年更新していないかは点検してほしいの。
2026年下半期に動くなら、何から手をつけるか
まず「直近5年で再現できる成果」を1枚にする
みなと
棚卸しから始めるのがセオリーだと思ってたんですけど、違うんですか?
ユウタ
棚卸しは大事なんだけど、経験が長い人がやると全部を洗い出して疲れて終わるんだ。だから先に範囲を切る。直近5年に絞って、「移った先でも同じことができるもの」だけを書き出す。過去の栄光ではなく、持ち運べる能力だけを残す作業だと思えばいい。
求人を見る前に、譲れない条件を3つに絞る
りこ先生
順番が逆になっている人が多いの。求人を見てから条件を考えると、目の前の1件に条件が引きずられるわ。年収・勤務地・働き方・役割から「これが欠けたら受けない」を3つだけ選び、紙に書いてから検索を始める。それだけで迷う時間がかなり減るはずよ。
ハイクラス帯は「条件を先に伝える」ほうが早い
ユウタ
もう一つ実感したのが、40〜50代の管理職・専門職ポジションは公開求人に出てこないことが多いということ。自分で探して片っ端から応募するより、年収レンジと勤務地を先に伝えて、合う案件だけ見せてもらうほうが消耗が少ない。追い風が吹いている年代ほど、この使い方が効いてくると思う。
ハイクラス帯・管理職ポジションを検討している方は、条件を先に共有できるエージェントを1社は持っておくと動きやすくなります。▶ 40〜50代の管理職・専門職向け求人を、条件を先に伝えて相談する|JAC Recruitment(無料登録)
追い風の中でも、変わらないこと
応募数を増やしても、書類は通らない
ユウタ
正直に書いておくね。市場が良くなっても、書類が整っていなければ結果は変わらない。整っていない書類のまま数を撃つと、落ちた原因が年齢なのか見せ方なのか永久に分からない。まず形を確定させてから応募先を検証する——この順番は追い風でも変わらないよ。
「今なら受かる」ではなく「今なら会える」
りこ先生
データが保証しているのは「条件の良い転職が成立する確率が上がった」ことまで。あなた個人が受かることは、どんな統計も約束してくれないわ。市場環境は追い風か向かい風かを教えてくれるだけで、漕ぐのは自分。ただ、向かい風のときに漕ぎ出すより今のほうが進みやすいのは確かよ。
よくある疑問
みなと
もう55歳を過ぎている場合は、もう動かないほうがいいってことになりますか?
りこ先生
いいえ、そうは言っていないわ。55〜59歳でも「増加」した人は27.4%いるの。4人に1人以上よ。変わるのは確率であって、可能性ではないの。ただ、年収維持を前提に組み立てると選択肢が急に狭くなるのは事実。この年代は「年収」以外に何を取りに行くのかを先に決めるほうが、現実的な着地に近づけるわ。
みなと
逆に、下半期じゃなくて来年まで待つという選択はどうですか?
ユウタ
市場がどうなるかは誰にも分からない。でも確実に分かっていることが一つある——1年待てば、自分は1歳上がる。55歳の壁が近い人ほど、待つことのコストは市場の変動より大きい。登録して情報を見るところまでは、待つ理由にならないと思うよ。決めるのはその後でいい。
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まとめ
「ミドルシニア再評価」は、雰囲気ではなくデータで確認できる現象でした。厚生労働省「令和6年雇用動向調査」では転職した人の賃金は全体で「増加」40.5%・「減少」29.4%。45〜49歳は増加46.4%/減少23.8%で前年比+9.1ポイントと全年代最大の伸び、50〜54歳もプラス圏を保つ一方、55〜59歳は増加27.4%/減少36.6%と向きが逆転し、追い風の届く範囲は実質40代後半から50代前半までだと分かります。ただし混同してはいけないのが、良くなったのは「決まりやすさ」ではなく「決まった人の条件」だという点。実際に転職した人の割合は年代が上がるほど下がっています。だから下半期にやるべきことは、①直近5年の再現できる成果を1枚にする ②譲れない条件を3つに絞ってから求人を見る ③年収は下限だけ決めて上を開けておく——この3つです。追い風は、受け取れる形にしていない人の横を素通りしていきます。統計を読んで安心して終わらせず、今週どこを1か所直すかまで決めてしまいましょう。
【出典】厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」/マイナビキャリアリサーチLab「転職動向調査2026年版(2025年実績)」(2025年12月調査・有効回答1,446名)
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